本気ッ♂016


「どどどどどどッ
どうしようッ!!!!?」


カノンくんってばッ。

ふくふくホッペの少女が
あのホームにいたコトを
知っているんだろうかッッ。


「セイッ、カノンくんと
連絡つかないのッ!?」


電車のドアのガラスに
顔を押しつけ

ちいさくなっていく
カノンくんの姿を
必死で目で追っていた私を

セイが冷ややかな目で
見降ろしているッ。


「…ガラスに
お前の顔型がついてる」

「え…、あッッ!」


電車のドアのガラスに

くっきりと
私の顔の脂がついていてッ!!


ゴシゴシゴシッ!

私は反射的に
自分のコートの袖口で
顔型を拭い去ったッ。


「そんなコトしてるから

トーコのコートは
いつもテカってるんだな」

なんてッ。


「…うるさいわねッ」

お望みなら

アナタさまの
そのおキレイな白い学ランで

拭いて差し上げても
よくってよッッ!


だけどッ。


そんなセリフを
口に出そうモノなら

セイがまた
ヘソを曲げかねないッ。


ここはひとつ
私がオトナになってッ

「とにかくッ!

次の駅で降りて
引き返すからッ!」

話を本題に戻したのにッ。


「そんな時間はない」

なんてッ

私の希望を
セイがアッサリと却下するッ。


「あんな落書き
放ったままにしていたら

いい見世物だ」


これ以上
問題がおおきくなって

母さん達が
学校に呼び出されても
知らないぞ、ってッ

ガラスで湿っていた
私のホッペを

セイがサディスティックに
自分の親指で
ぐにぐに、したッ。