「落書きなんてッ!」
もうすでに、みんなにも
見られてるんだしッ!
第一、私は被害者でッ。
「随分な余裕だな。
【らぶり〜トーコ】の文字を
消すのが惜しくなったか?」
ってッ。
アンタねえッ!
「セイはカノンくんが
心配じゃないのッ?」
「おバカなお前に
心配されるとは
カノンも
さぞかし口惜しかろう」
そこには
睨み合うふたりがいたッ。
そんなふたりに
割入るようにして
電車の車内放送が
次の駅が近づいてきたコトを
知らせてくるッ。
「…もう、いいよッ!」
私はケータイを取り出した。
シンスケ宛てのメールに
落書きの消し方を
打ち込む私を見て
「何でシンスケさんなんだ」
「あッ」
セイが私からケータイを
取り上げるッ。
「シンスケは
ああ見えても
アタマいいもんッ」
私の拙い説明でも
きっと理解して
何とかしてくれるハズッ。
【ようざいで落ちる。
セイナントカセイの
高いヤツで先に落とす。
音楽室と実験室にあるらしい】
「…説明、と言うより
謎の暗号にしか見えんがな」
「だったらッ!
セイが
落書きの消し方の手順
詳しく文章にしてよッ」
「面倒臭い」
…だったら
嫌なツッコミとか
入れてくるなッ。
「……」
「……」
再びにらみ合うふたりに
またまた
割入ってくるようにして
車内放送が
電車が
ホームに到着したコトを
お調子よく知らせてくるッ。
「…さようならッ!」
電車のドアが開くと同時に
ホームに飛び出した私の
コートを
セイがむんず、と掴んで!!
「どうしてコートを
スカートごと掴むかなッ!?」
こんなときに限って
かわいいパンツを
穿いていてッ
蹴りをお見舞いできない
歯がゆさよッ!!!