「……」
私は後ろのスカートを
押さえながら
ちょちょちょ。
小刻みな後ろ歩きで
セイの方に戻ったッ。
「いい加減にしてよねッ」
私のコートとスカートを
掴んで離そうとしない
セイの手を引っ張って
セイを強引に電車から
引きずり降ろそうとしたらッ
「きゃッ!?」
そのまま後ろから
腰を抱きかかえられ
反対に
電車の中に連れ込まれッ。
まるで
セイの愚行に
協力するかのように
発車のベルが鳴って
ドアが閉まるッッ!!!!
「…どうして
邪魔をするのよッッ!!!」
「トーコが可愛いから」
「ムカつくッ!」
「睨んだ目も可愛いぞ」
「ムカムカムカああああッ」
セイもカノンくんも
「ふたりしてッ
一体
何を考えているんだかッ」
カノンくんの後ろに
あの少女の姿を見つけて
セイはあのとき
確かに舌打ちをしていた。
それは
カノンくんを
ひとりでホームに
置いてきてしまったコトの
後悔から
思わず出てしまった仕草では
なかったのか。
「何を考えてるか、なんて
みんなが
イチイチ顔に出してたら
世の中が殺伐とする
だろ〜が!」
セイが力説しながら
私のコートから
やっと手を離して
シワになった部分を
ぱんぱん、と
乱暴に払い伸ばした。
「シンスケだって
ナンノだって
何を考えているのか
とっても
わかりやすいけど
いたって平和だよッ」
「周りに気を遣わせて、なッ」
「ぐッ」
…セイは痛いトコばかり
ピンポイントで
確実に突いてくるッ。