本気ッ♂014


「あ、雨だ」

パラパラと
電車の窓が音を立てて

雲行きの悪化を
知らせてきた。


「どうしよう。

カサなんて
持って出なかったよ」


今日は朝から
お天気のゴキゲンも
よかったのに。


「…午後から
雨が降るなんて

天気予報でも
言ってなかったよね…」


「言ってたな」

「!!」


セイとカノンくんの
ふたりから
背中を向けて

ひっそりと
口にした私のセリフに

耳聡いセイが反応する。


「南西の空にも
ずいぶん雨雲が
広がっていましたからね」

カノンくんが
電車の窓の向こうに
目をやったッ。


…アンタ達ッ。

雨雲の存在を
知っていながら

何故、出掛けるときに

カサのひとつ
持って出ようとしないのかッ。


「駅から私の学校までは
けっこう歩くんだからねッ」

ふたりに背中を向けたまま

私はため息を誤魔化すように
手すり棒に
オデコを擦りつけると


「知ってる」

セイとカノンくんが

同時に同じコトバを
私に返してきてッ。


「……」
「……」
「……」


どちらの顔を先に見て

どちらの返事に
先に答えるのか。


…背中に感じる
ふたりの真剣な眼差しは

気のせいだと思いたいッ。