セイの顔を先に見れば
セイは調子づいて

ますますカノンくんに
心理的プレッシャーを
与えるであろうコトは

目に見えているし。


カノンくんに気を遣うと

セイはますます
カノンくんを
目の敵にするに決まってる。


彼らにとって
その優先順位が重要だと
わかるだけに

私はどちらの方にも
振り向くワケには
いかなかったッ。


かといって。

「……」

このまま無視を
続けていられるとも

とてもじゃないけど
思えないッ。


自分達から離れた場所にある
電車の中の窓ガラスに
ちらちらと目をやって

いやに静かな
セイとカノンくんの様子を
チェックしようとして

同じ車両に乗り合わせた
女性と
目が合ってしまったッ。


ママと同い年くらいだろうか。

その女性は
私と目が合うと
慌てて
車内の宙吊り広告に
視線を移して。


「……」

同じ車両の中だけでなく
両隣の車両の乗客までもが

チラチラ、とこちらに
興味を寄せているコトに

そのとき
初めて気がついた。


「……」

セイとふたりで行動していると

こ〜ゆ〜のは
日常茶飯事だったけど。


この日は
少しばかりその様子が
違っていて。


いつもなら
セイの独特のオーラに
気おくれするように

皆が遠慮がちに

遠くから
セイのオーラを味わうのが
精一杯ってカンジなのに。


今日は同じ制服の

これまた
そこそこ可愛い系の
カノンくんが
傍にいるからなのか。


各駅停車の電車が
最初の駅に着いて
ドアが開くと

当然のように
私達がタムロっていたドアに
降車客が集まってきて。


どんッ!

これまた
当然のように
私は知らない皆さまから
邪魔者にされるッ。