セイに向かっては
ハッキリ辛口に
モノを言う子だから
そんな気弱さが
すごく意外な気もした。
だけど。
…カノンくんの実家での
出来事を
今、思い返してみると
確かに
カノンくんは
実家のお母さんや
カトーさんに対しても
本音を言えない子で。
ヒトを地下室に
閉じ込めたり
黒魔術で呪おうとしたり。
エキセントリックな
行為でしか
不満を伝えられないような
トコロがあった。
ラブレターを破ったコトも
カノンくんらしい、と言えば
らしい、のかもしれない。
「…セイも
気がついていたんなら
助け舟を出してあげたら
いいのに」
「お生憎様!
俺の親切は
そんなに安くはないんでね!」
セイが腕の中の私のオデコに
キスをしてッ!!!!
「こッ、こんなトコロでッ」
「カノンのカラダに隠れて
他の乗客から見えないよ」
「……」
私とセイの会話が
聴こえているだろうに
こっちに背中を向けたまま
カノンくんは
電車の揺れに逆らうように
姿勢よく立っていた。
「各駅停車なんて
のどかなモノに乗ったんだ。
楽しもうぜ」
なんてッ。
そんなカノンくんの態度に
セイがますます調子づくッ。
「やめてよねッ!
制服着て
通学電車に
乗ってるんだからッ」
「だから、楽しいんじゃん」
もしもしもしッ。
「な?」
な?、じゃないッ!!!
セイの手がモゾモゾと
私のコートの中に
入ってきたッ。