「破られた手紙なんて返されて
気分いいヤツなんて
フツー、いるかなあ?」

「ぐッ」

…確かに
セイの言う通りだけどッ


「…でもッ!!!」

「でも、何?」

「……」

この場を切り抜けられる
いい知恵なんて

この私に浮かぶハズもなくッ。


「あうあうあうッ」

口は動けども
声にはならずッ。


「拾った手紙に
返事を書こうとする
お前のその奇妙な行動心理を
キチンと論理的に
説明できるようになったら

この手紙、返してやるよ」

なんてッ!!!


セイってばッ

全てをわかってて
私に嫌がらせしてるとしか
思えませんッ!!!!


「私が貰った、って言えば
返してくれるのッ!?」


「お前が貰った手紙を
誰が何の為に破ったと
言うんだ?」

「……」

「説明できなきゃ
お預け、だな」

「そんなッ!!!!!」


セイの無情な後ろ姿に

ふくふくホッペの
オンナノコの

ナミダのシーンが
私の中に甦ってきて

もうダメだ、と
諦めた瞬間。


「それ、僕の手紙です」


「!!」

少し開いたドアの向こうから
声がした!!!


セイのカラダ越し
暗い廊下に

デッカイ目が光って見える。


「返して貰えますか?」

セイの手から
ピンクのお手紙を
奪おうとしているのは…


「カノンくんッ!?」

そのヒトでッ。


「…何だ、お前。
いつの間に帰ってたんだ?」


玄関チャイムは
鳴らなかったけど、って

セイが冷ややかに
カノンくんを見下ろしたッ。