「マユミさんから
合鍵貰ってましたから」


カノンくんが
ママの少女趣味な
キーホルダーがついた
”ソレ”をセイに見せながら

思わせぶりに
私に視線を送ってくる。

「…カノンくん」

私が手紙を
拾い集めている間に

いつのまにか
姿が見えなくなっていて。


…今まで
どこで何をしていたのか。


私は悪くないハズなのに

問題を起こした
カノンくんの方が
堂々としていて。

私の方が
視線を床に落として
しまっているのは
何故なのかッ。


だけど。

続く沈黙に
そっと顔を上げたとき

私の顔を見たセイの眉間に
くっきりと
深いシワが寄って。


…セイにとって

私の表情が
とっても意味深に
見えたであろうコトだけは

ハッキリしていた。


「返して貰いますよ」

沈黙を壊すように
カノンくんが

ババ抜きのカードのように
セイの指からピンクの封筒を
さっと抜き取って

二つ折りにして
自分の制服の胸ポケットに
入れる。


「…陽気なおねえさまへ、って
書いてあったけど」

セイのツッコミにも

「ただのジョークですよ」

カノンくんは
全然動じていなかった。


「親戚の家に世話になるなら
感謝の気持ちを
伝えた方がいいって、って

クラスメイト達が気を回して
用意してくれたんですけど」


何も文章が浮かばなくて
駅で破り捨ててたのを
トーコさんに
見られてたみたいで、って

カノンくんは
顔色ひとつ変えずに

大胆なウソを
平気で重ねている。


…さすが
血は争えないッ。