あのとき

確かにカノンくんは
脱衣カゴの中に
手を入れていて。


「…もしかして」

カノンくんは
洗濯モノの中に
この手紙を見つけてしまって


それを誤魔化す為に

慌てて手にしたのが
私の下着だった、とか?


少しずつ
アタマの中の霧が
晴れてきた。


…でも。

それなら

手紙を見つけた、って

どうして
すぐに教えては
くれなかったんだろう。


やっぱり

ピンクの封筒に
赤いハートマークが

意味深に思えたから?


「……」


自分の他にも
トーコさんを慕うヤツがいる。

恋するオトコの直感が
そうさせたのかッ。


…だとしたら

それは嫉妬心がさせた
純然たる自然な行為。


自分が恋慕う女性を
狙っているライバルがいる。


そう思っただけで

中身を確認せずには
いられなかったとしたらッ。

私にその愚かな行為を

責めるコトなど
出来はしないッ。


「トーコ?」

「あ、とにかく
手紙のコトはセイにだけは
ナイショにしてね!」


私は”セイにだけは”の
部分を強調して

私はママを強引にドアから
押し出した。