ぷくぷくホッペのオンナノコの
気持ちが入った手紙の残骸。


「全部、拾い集められたと
思うんだけど」

私はそれらを
学習机の上に広げて
繋ぎ合わせようと試みる。


制限時間は
セイが起きてくるまで。


時間になったら

セイの部屋から
おおきな目覚ましの音が
聴こえてくるハズだ。


「ジグソーパズルとか

ちいさい頃は
よくやってたんだけど」


いつも最初の10分で
投げ出しては

セイに続きをやらせてた。


「こ〜ゆ〜根気がいるモノって
すっごい苦手なんだけど」


今回ばかりは
途中で投げ出して

セイに
後を任せるワケにはいかない。


思わせぶりな
ピンクの封筒に
赤いハート。

元の形が
復元されていく度に
ドキドキと胸が高鳴る。


「カノンくんだから
破り捨てるくらいで
済んだけど…」


見つかったのがセイなら
今頃どうなっていたか。


「…想像するだけで
恐ろしいッ」


どっちが裏か表か

手描きのハートを頼りに
慎重に判別していくしか
ないんだけど。


カノンくんの
この容赦のない
執拗な破りっぷりに

その嫉妬心のおおきさを
垣間見る。


「…ハート以外
文字らしい文字が
見当たらないのは…」


最初から
文字はなかったのか。


それとも

カノンくんが抜き取って
まだ手元に持っていたり
するのだろうか。


「…いかんッ。

どうも最悪なコトばっか
考えてしまっているぞッ」