両手で
自分に喝を入れ直し

時間を掛けて

少しずつだけど
手紙の形が見えてきた。


【いつも陽気なおねえさまへ】


唯一、解読できたのは
この1行だけ。


文字らしい文字を
他に見つけるコトはできない。


「確か封筒には
差出人の名前とか
なかったよね…」


肝心な自分の名前を
書き忘れたりするなんて。


「ああ見えて

意外と慌てん坊さんだったり
するのかな」


なんて。


カノンくんが
中に入っていた便箋を
抜き取った、という可能性を

私はアタマから
必死で追い出しながら


元の形に戻った手紙を
テープで貼り合わせて。


「この赤いハートが
きっと燃える想いを
表現しているんだよね」


私は自分に都合よく
解釈をして


「…お返事は
ありがとう、って

お手紙で返すしかないか」


貼り合わせ終えた
手紙を机の右端に置いて

とっておきのレターセットを
引き出しから取り出した。


「どれにしようかな」


あの子のイメージだと
やっぱり純白なんだけど。


「ピンクのペンで
ありがとう、って書いたら
意味深すぎるかなあ」


おねえさまと
両想いだ、なんて

下手に期待を持たせたら
可哀想だし。


「かといって
ブルーのストライプは」

ちょっと事務的で
クールすぎる気がするし…。


「やっぱり、こっちの
クローバーとてんとう虫に
しようかな〜…」


う〜ん。悩みますッ。


「こんな手紙に
律儀に返事なんかしてやる
必要なんかないぞ」

「!!」