少し拗ねたように
私を見つめるその瞳ッ。
でも、私には
セイと言う大事なヒトが
いるんですッ。
ごめんなさいッ。
カノンくんッ。
私はアナタの気持ちには
応えられないッッッ。
「トーコッ!
何してるのッ!」
え。
「授業が始まる前に
課題を提出するから、って
急いで教室を出たクセに!」
何をこんなトコロで
油を売っているんだ、って
こんなときに限って
私の姿を見つけた
クラスメイトが
声を掛けてきたりしてッ。
「そうだったッ!」
シンスケと話していて
すっかりその存在を
忘れてしまっていた
その課題ッ。
「次のテストもまた
12点を取りたいのか、って
先生にまた嫌味言われるよ」
ってッ。
「あーッ、あーッ、あーッ!」
おおきな声で
クラスメイトのセリフを
かき消しても
…遅かったッ。
「12点…?」
カノンくんが
信じられないという顔で
私を見ていてッ。
「……」
アタマから冷や汗が
湧き出てくるッ。
…せめて9点だったら
10点満点だ、って
言い張れるのにッ。
神様は12点なんて
中途半端な点を
何故
私にお与えになったのかッ。
「……」
「……」
私はこれでもか、と
名門進学校の
白い学ランの前で
辱められるッ。
「カ、カノンくんッ。
この件はぜひとも
セイにはご内密にッッ」
「トーコ!、ほら、早くッ!」
「あッ」
私はふたりのクラスメイトに
両脇を抱えられ
「トーコさん!」
半ば強引にその場から
連れ去られたッ。