本気ッ♂008


「セイが通ってた中等部の
白い学ランを着たヤツを
見かけたけど」

教室移動の途中の廊下で

化学実験室帰りの
シンスケに声を掛けられるッ。


「ああ、たぶんそれは…」


「やっぱりあの制服は
セイくらい気品がないと
なかなか着こなせない
制服なんだな」

なんてッ。


…シンスケは
私とセイの幼なじみで

いろんな意味で
シンスケが
セイのコトが大好きなのは
知ってるけどッ。


「…ふッ」

シンスケの
不気味な思い出し笑いに

あれはウチのカノンくんだ、と
言い出せなくなるッ。


「そう言えば

最近、セイを
あんまり見かけないけど

どうしてる?」


”そう言えば”なんて

さも
自然な会話の流れのように
持っていってはいるけれどッ。


シンスケが
白い学ランの話を
持ち出したのは

セイの近況を
訊きたかったんですねッ。


「行きつけだった
朝定食の店にも
全然顔を
出してないみたいだし…」


…もしやアナタは
セイに逢いたい一心で

セイの出没しそうな場所に
通い続けて
いたんでしょうかッ。


「駅員さんも
ここ1週間程
セイの姿を見掛けてないって
言ってたし」

「……」

シンスケのアタマの中は
どこまでも
セイのコトでいっぱいでッ。


…最近ナンノの機嫌が
悪いのは

このシンスケという
彼氏が原因だったんですねッ。


「もしかして

体調崩して
寝込んでたりしてるんじゃ
ないのかッ!?」

黙り込んでいた私の様子に
不安を感じ取ったらしく


「そうなんだなッ!?」

シンスケが
私の口を割らせようと

私の両腕をガシッと掴んで
前後に揺さぶったッ。