「…なッなんか今ッ
レポートが忙しくってッ
ずっと自分の部屋に
いるみたいだけどッ」
私のミニ情報に
シンスケの
ぶっとくて短い腕が
緩んでッ
「そうかッ…!」
その顔が
イッキにほころんでッ。
…そのハニカミが
ちょっとコワイですッ。
「アイツは
生真面目なヤツだから
任された仕事に
手を抜けなくて
きっと根を詰めて
やってるんだろうな」
なんてッ
シンスケのアタマの中では
セイはどこまで
神聖化されて
いるのでしょうかッ。
「俺、頑張ってるセイに
何にもしてやれないけれど」
差し入れでも持って
励ましてやろうかな、ってッ
シンスケが
真剣な眼差しを真っ直ぐに
私に向けてきてッ。
「……」
「……」
…ごくんッ。
あまりの緊迫感に
思わずツバを飲み込んだッ。
アナタは
セイに逢いに行く口実が
欲しいんですねッ。
私に”ぜひ”と
ウェルカムして
貰いたいんですよねッ。
…だけど。
今は、ただでさえ
カノンくんがウチにいて
セイの機嫌も
マックスに悪いのにッ。
これ以上
我が家に心労のネタを
持ち込みたくないと
自分の利害を
最優先してしまう
器のちいさい私を
許してくださいッ!!!
「…気持ちだけ
伝えておくねッ」
「えッ、ちょっと!
トーコ!
トオーーーコオオオ!!!」
廊下に響き渡る
シンスケの断末魔に
ココロを傷めながら
私は
シンスケを置き去りにして
次の移動教室に
ダッシュしたッ。