科学実験室帰りの
シンスケも

カノンくんのコトを
見掛けた、みたいなコトを
言っていたけれど。

化学実験室は
これまた遠く
別棟にあって。


「…もしかして、カノンくん」

広すぎる校内で
迷子になっているのではッ。


「……」

だとしても

子どもじゃないんだから
迷子の放送を
して貰うワケにはいかないし。


「…そう言えば
私、カノンくんのケータイの
番号、知らないや」


ケータイ自体
中学生で寮生活の
カノンくんが
持っているモノなのか?


「う〜ん」

ママに電話して
それとなく聴いてみようか…。


ポケットの中の
ケータイを探ろうとして

「あのッ…!」

私は
かわいいオンナノコの声に
呼び止めらるッ。


「昨日のお手紙
読んで戴けましたか?」


「……」

振り向くと

そこには
昨日手紙をくれた
愛くるしい女子中学生ッ。


「手紙…ッ!!!!」

すっかり忘れてましたッ。


その目を
キラキラさせながら

ぷくぷくホッペは
相変わらず
可愛いピンクに
染められていてッ。


「おねえさま?」


…期待いっぱいの
甘いその声は

ああッ。
私をどこまでも追い詰めるッ。


まだ読んでもいない、とは

とてもじゃないけど
言い出せそうに
ありませんッ。


このまん丸な無垢なお顔を
平気で曇らせるコトが
出来たとしたら

ソイツは
きっと悪魔でしょうッッ。