「あ、うん、あのねッ」
いかんッ。
上手く切り抜けなければ
いけないと
思えば思う程
焦って
アタマの中は
真っ白になるだけで
もはや
何も浮かびませんッ。
「そんな困った顔
しないでください」
ふくふくホッペが
訴えてきてッ。
「私ッ。あんなお手紙を
差し上げたコト
後悔してしまうじゃ
ないですか!」
「そそそそそ…」
そんなつもりは
ないのですがッ。
キャラに合わない
その眉間のシワを
私が作り出して
しまったのだとしたらッ。
それは
まさに”罪”ッ!!!
「…ううん!
お手紙、嬉しかったよッ」
写真を撮るときにする
とっておきの笑顔を向けてッ
「残念だけど
移動教室の途中で
急いでるんだ!」
また部活でね、って
私はその場を取り繕って
走り去るッ。
「はあ、はあ、はッ」
渡り廊下まで全力疾走して。
「ママッ
この時間帯はッ
まだ家にいるかなッ」
ゼイゼイと
息を切らせながら
私はポケットから
ケータイを取り出すと
「こうなったらッ
頼れるのはッ
ママしかいないしッ」
息を整え
ママのケータイに
電話を掛けたッ。
そう。
「こうなったら」
恥を忍んで
ママに手紙を
読み上げて貰うしかないッ。
「あ、ママッ!?
傍にセイは
いないよねッ!?」
『セイがどうかしたの?』