トーコさんに
「興味がある…?」
「はいッ!」
「……」
電車がホームに入ってくる音に
”学校”という部分を
かき消されたのは
神様のイタズラだったのかッ。
「あはッ?、ははは?」
笑ってその状況を
誤魔化そうとする私の腕を
カノンくんがまた掴むッ。
「カ、カノンくんッ!?」
「ほら、電車が来ましたよ!」
腕を引っ張られながら
そのままイッキに
駅の袴線橋を駆け抜けて
『駆け込み乗車は危険です』
無粋な車内放送が
若いふたりを責めていたッ。
「はあ、はあ、はあ」
「…間に合いましたね」
「……」
私に向けられる
カノンくんの清々しい
中学生スマイルが
朝の陽射しに照らされて。
キラキラキラ。
…不覚にも
ドキっとしてしまうのは
昨夜のいかがわしい夢の
せいなのかッ。
カノンくんに
掴まれ続けている腕が
昨夜の夢を鮮やかに甦らせて。
「…カノンくん、腕ッ」
「あ、すみません」
腕を放して貰っても
まだ胸がドキドキ言ってる。
「…トーコさんの学校も
今、オープンキャンパス中
なんですよね?」
え?
「僕なんかが突然行っても
学校に入れて貰えますよね?」
ってッ。
まさかッ
カノンくんってば
本気で私の学校にまで
ついてくるつもり
なのでしょうかッ。