どこの毛でもいいだろうにッ!


何故そんなコトに
興味を持つのか、と

カノンくんの沈黙が
語っているッ。


「…トーコさん。
乗り換えですよ」


カノンくんが
何も訊かなかったフリをして

私の手を握ってくる。


「カノンくん…ッ?」

「はぐれないでくださいね」

「……」


学生だらけのホーム。

人混みを懸念しての
手繋ぎなのは
わかっていたけど。


なんか胸が高鳴ってしまう。


…こんなトコ
セイに見られたらヤバイよね。


セイなんかいないと
わかっていても

その後ろめたさに


「カノンくんッ」

手ではなく
私のカバンを掴んで、と
頼もうとした瞬間。


「アンタッ!

ウチのトーコに
何ちょっかい出してんのッ」


「!!」

混雑する駅のホームに
轟く声ッ。


「…誰?」

「…女子新体操部の部長で
私の一番の友達のナンノ」

…ですッ。


「ナンノッ。
彼はセイのイトコの…!」


「カノンです。
以後、お見知りおきを」

ってッ。


中学生の
さわやかキラースマイルが

ナンノのヒンシュクを
さらに買うッ。


「この制服ッ。
セイくんが通っていた
中等部の、よねッ」