そんな名門校の生徒が
ウチみたいな学校に
来るなんて

どういう了見かしら、ってッ。


私と同じく
お勉強ができない
ナンノにとって

カノンくんの大人びた挨拶が

とっても
嫌味に感じたようでッ。


「カノンくんはねッ。
ウチの学校の部活を
見学したいんだって!」


混雑する駅のホームで
私は必死で
ナンノをなだめたッ。


「部活の見学なら
午後からで
充分じゃないッ!?」


乗り替えに急ぐ学生達に
冷ややかに邪魔されながら


「顧問の先生にも
お話を伺いたいし…」

できたら
部活に参加できないか、って
交渉しようと思って、って

カノンくんは
実に明快な理由を
提示するッ。


「…それって
”道場破り”みたく

勝ったら看板を戴いて
帰ります、とか?」


…ナンノちゃんッ!
いい加減にしましょうねッ。


我々、庶民頭脳が
論破できるような
相手ではありませんッ!


「看板ですか…」

戴けるのであれば、なんてッ!

カノンくんッ。

ナンノちゃんも
そ〜ゆ〜ジョークが通じる
相手ではありませんッ。



「…いい度胸ね。

でも残念ながら
ウチには男子新体操部は
ないのよ」


ってッ。

ナンノちゃんッ!


カノンくんが
レオタードを着て

華麗に演技するような
タイプに
見えますかッ!?


「クスッ」

ナンノちゃんのオオボケに

カノンくんが

まるでセイのような
ヒトを食ったような
笑い方をして。


「……」

何故だか
とっても”らしい”と
思ってしまった。