「セイッ。
トーコを起こしに行って
自分が寝てちゃ
ダメじゃないッ」
「え」
「忙しいんだからッ」
頼まれたコトは
ちゃんとやってね、って
自分の手に持っていた
スチームアイロンと
ハンカチで
忙しさを存分にアピールして
ママは私の部屋を
早々に後にした…。
「……」
何だかよくわからないけど。
…助かった?
「…久々のお客に
母さん
やたら張り切っててさ」
「お客って…」
カノンくん?
「俺も母さんに掴まって
今日も早くから
小芋の皮剥きを
手伝わされてさ〜」
何気なく話を続けながら
セイが自分の手を
私のパジャマの中に
滑り込ませてくる。
「冷たッ!」
冷たいセイの手を
私が反射的に抜き取るのを
見て
セイがまた笑っててッ。
「…セイ。もしかして
昨夜から、ひと晩中
起きてたりするの?」
「見ればわかるだろ」
セイが自分の着ていた
Tシャツの首元を
摘まんで
伸ばして見せた。
「…確かにッ」
昨夜と同じ服装だ。
けどッ!!!
「お風呂場で泡だらけになった
Tシャツのまま
私の布団に入ってるッッ」
汚い、と騒ぐ私に
「ほら、学校に遅刻するぞ」
私の目の前に
目覚まし時計を差し出して
セイがまた笑う。