洗面所に響く
低い声…ッ。
「……」
振り返るのが恐いくらい
洗面所の入り口に
立ち込めている
その黒いオーラはッ!!!!
「あはッ。セイッ?」
私が引きつった笑顔を
ドア越しに立つセイに
向けると
「何をしてるって
訊いてるんだ…!!!」
セイは怒鳴りながら
脱衣カゴの前で
うずくまっていたカノンくんの
Tシャツの首根っこを
むんず、と掴んでッ
ドガンッ!
そのまま洗面台の上の鏡に
カノンくんの背中を
強引に押しつけるッ!!!
「うぐぐぐぐッ」
そのままTシャツの
首根っこを
締め上げられるようにして
カノンくんの
両の足が床から浮いて。
「…どうして黙ってる!?」
セイの尋問にも
その口と同じく
固く閉じている
カノンくんの片目から
ただナミダが
どんどん
流れ出ていくばかりで。
「…そんな風に
セイが締め上げてちゃ
答えたくても
答えられないでしょッ!」
私はセイのその行為を
止めようと
セイの腕に
しがみついたのにッ。
「答えたくなんて
ないんだよな!?
答えられないんだろう?」
セイの目には
もう私の姿は映っては
いなかった。
「トーコのパンツなんか持って
言い逃れなんか
出来はしないよなあッ!?」
「……」
セイに締め上げられて
カノンくんの顔色が
赤から青に変わっていく。
「お願いだからッ
これ以上は、やめてッ!
セイッッ!!!!!!」
私の叫び声に
セイの腕に
一層、力が入ってしまった。
…もう実力行使で
止めるしかないッ!!!!
私がセイのアゴに向かって
エルボーを
食らわせようとした瞬間。
「アナタ達
何騒いでるのッ!?」
…暴走するセイの行為を
止めたのは
ママの一喝、だった。