「…ゲホッ。ゴホホッ」
セイの腕から解放されて
カノンくんの上半身が
洗面台の上に滑り落ちる。
「揃いも揃って3人とも
こんなトコロで
何していたの?」
「……」
「……」
「……」
いつもなら
口八丁、手八丁で
上手くその場を切り抜ける
セイが
口を真一文字に結んだまま
黙っていて。
「トーコ、アナタ
もしかして
まだお風呂に入ってたの!?」
ママがバスタオル姿の
私を見て
その平和な眉をひそめた。
「ごめんなさいね。
カノンくん」
え。
「私が勘違いしちゃって
トーコなら、もうお風呂から
出たと思うわ、なんて
適当なコト
答えちゃったから!」
ママはカノンくんに
謝罪しながら
慌てて近づいて。
「ママ?」
「トーコもごめんなさいね。
カノンくんが
自分の下着は自分で
手洗いしたいから、って
あんまり言うモノだから」
ママの証言は
カノンくんへの誤解を
解くモノかと思われたのに。
「…母さん。
コイツの手に
握られているモノを見て
そのセリフを言ってる?」
カノンくんの立場を
追い詰める
決定的な証拠を
セイがママにつきつけるッ。
「えッ。あらッ、まあ♪」
素っ頓狂な
ママの抜けた声に
思わず緊張の糸が
キレそうになったッ。
「トーコってば
脱いだ下着を脱衣カゴに
入れちゃってたのね!」
ってッ。
それは
いつものコトですがッ。
「カノンくんは
自分の下着を見つけ出そうと
探していたのよね?」
はい?
「…お風呂から上がって
僕は自分の洗濯物は
後で自分で洗おうと
自分のカバンの中に
詰めておいたんですけど
マユミさんに
見つかってしまって…」
カノンくんが
ここにきて
初めてコトの真相を
自ら語り出した。