「トーコ。美味いだろ?」

セイが明るい調子で
話し掛けてくるけどッ。


「…うん」

美味しいモノを
目の前に

イマイチ
テンションが上がらないッ。

「なら
もっと美味そうな顔をしろッ」


正面に座っていたセイが
ダイニングのテーブルの下

私の座っていたイスを
ガコンッ、と蹴った。


「…美味しい、美味しいッ
ああ、美味しいなッ!!!!」


「…何だ。
その反抗的な態度は!」


「…美味しいです」

セイのその目に
いつになく
殺気を感じるのは


…恐らく
私の後ろに見え隠れする

正座してケーキを食べている
カノンくんの存在で。


カノンくんってば

パパが帰ってきてから
とゆ〜モノ

カノンクンはずっと
パパにくっついて回ってて

セイが苛立つのも
わからなくもない。


何せ、パパが
お風呂に入っているときも

「背中、流しましょうか」

などと声を掛けて

パパとバスルームで
ずっと
話し込んでいたモノだから。


やれ、トイレだ。
やれ、洗濯だ。
やれ、タオルがいる、だのと

私とセイのにゃんにゃん話を
カノンくんにさせまい、と

私とセイは

理由をつけては
バスルームに隣接する洗面所に
足を運んだ。