何を話し込んでいるのかと
思ったら
パパはカノンくんに
話をふられるまま
私とセイのちいさい頃の
思い出なんかを
話していてッ。
「あのときは
本当に驚かされたな」
なあ、トーコ、ってッ
洗濯機の前で
洗濯物を分類していた私に
パパが同意を求めてくるッ。
「……」
私のちいさい頃の話だけなら
まだしもッ
セイがちいさいときの
話なんか
下手に頷こうモノなら
後が恐いッ。
私は会話を避ける為に
洗面所から撤退するしか
なくてッ。
「どうして
すぐに帰ってくるんだッ」
役立たず、と言わんばかりの
セイの叱責が飛んできたッ。
「アイロンを持って
タンスの中のシャツでも
探してるフリをして来いッ」
「……」
無茶な設定を
押しつけられては
何度も洗面所に通うのって
明らかに
怪しいと思うのですがッ。
「お前なら
トーコだから、って
誰も疑問に思わない」
セイの自信満々の口調が
憎たらしいッ。
「ほら、早く行ってこい!」
私はセイに
背中を押し出されるモノの。
「……」
バスルームでは
最後まで
幼い頃の私の武勇伝に
花が咲いていてッ。
結局。
カノンくんとパパは
私とセイにとって
不利益になるような
会話はなかった…。