「まあ。
トーコの昔話を始めたら
数十分では済まないからな」
さっきから
ロールケーキを
口に運びながら
私の報告を
聴いているけれどッ。
こっちが
パパ達に聴こえないように、と
小声でしゃべっているのに
パパが話していた昔話に
やたらと
おおきなジェスチャーつきで
思い出し笑いなど
していてッ。
「…そ〜ゆ〜セイは
どんな話を
立ち聞きしていたのかなッ」
どうせ
まともには
話してはくれないと
思っていたら
「学生寮の
排水管の事故の話」
セイは実にアッサリと
私に情報を提供する。
「カノンの寮の部屋の
真上の部屋のヤツが
寮長に内緒で
自分の部屋で熱帯魚を
飼おうとして」
新鮮な水を
自分の部屋に引き込もうとして
大惨事ッ。
「…アタマのいいヒトって
考えるコトが違うよね」
普通なら水を自分の部屋に
引き込もうなんて
考えもしないけど。
「たまにいるんだよな。
学校の勉強はできるけど
想像力に欠けるヤツ」
偉大なる発見は
偉大なる失敗から始まるッ。
…だけど。
あの勿体ぶり屋のセイが
こうも簡単に
自分が見聞きしてきたコトを
私に話してしまうなんて。
ちょっと違和感。