「絶対無理ッ」
ぶんぶん、と
首を左右に振って
猛アピールも。
「…それがお前の
俺からの愛の答えか?」
なんてッ。
アナタは
私のアナタへの愛を
お試しになると
ゆ〜んですかッ。
…リビングに背中を向けて
座っていた私なら
セイから見たら
それは
可能なコトのように
思えるのかも
知れないけれどッ。
「…セイの後ろにある
食器棚のガラスに
私の姿が丸映り…」
しかもッ!
「うッ」
ガラスに映っている
カノンくんと目が合ったッ。
なのにッ!!!!
「何に躊躇しているんだ?」
なんてッ。
セイがキレイな顔で
私の顔を真っ直ぐに
睨んできてッ。
「……」
…恐らくセイも
カノンくんが
こっちをチラミしているのを
気がついてはいるんだろう。
わかっていて
その指を舐めろ、とッ。
「……」
私の全身の
毛穴という毛穴から
冷たい汗が噴き出してきたッ。
やはりここは
カノンくんの隙を窺って
瞬時にコトを済まして
やり過ごしてしまうのが
得策かッ。
意を決して
セイの要望通りに
その指を
口に運ぼうとしたのにッ!!!
「もういいッ!」
セイが突然席を立つ。
「…やっつけ仕事みたいな
愛ならいらない」
「…セイ?」
コーヒーのカップの淵を
中指と親指で掴むと
日本茶のようにして
コーヒーを飲みながら
セイは憮然としながら
自分の部屋へと
戻っていった。