「はあああああああ」


セイが
食べモノを乱暴に扱うのも

突然
機嫌を悪くしたりするのも

今日に始まったコトじゃ
ないけれど。


…重苦しい胸のツカエ。


「……」

大好きなバスタイムなのに。


あたたかいお湯に
浸かりながらも

セイの後ろ姿を思い出しては

身も心も
どんどん重くなってくる。


「…何が
やっつけ仕事みたいな
愛ならいらない、よッ」

ぶくぶくぶくッ。


「カノンくんだけじゃなく

パパやママの目だって
あるんだからねッ」

ぶくッ、ぶくぶくッ。


「中学生のカノンくんを
どうしてあそこまで
オトナゲなく意識するのか

ホントッわかんないッ」

ぶぶぶくぶくぶくぶ…。


セイに何を言っても
百倍返しで言い返されるに
決まってるから、と

私はお湯の中で
ひとりで愚痴っていた
つもりだった。


のにッ!!!


「オトナゲなくて
悪かったな」

「!!!!!」


バスルームのドアの向こう。

セイの低い声が
聴こえてきてッ。


「…セイ?
そこにいたんだ?」

おおいにアセるッ。


脱衣場になっている
洗面所の内カギも

コインひとつで
セイに開けられてしまうのは
いつものコトだったけどッ。


「お前がいつまでも
風呂場と洗面所を
独占していると

いい加減
みんなの迷惑なんだけどな」


バスルームのドアの
スリガラスに

セイのシルエットが
映っててッ。