取りあえず
セイの目につかないであろう
場所に避難をさせて

「明日
学校に行く電車の中で
読もうッ」

私は逸る気持ちを抑えて
ピンクの封筒を隠す場所の
吟味を始めた。


「とはいえ」

あのセイに
見つからない場所なんて

はたしてこの家の中に
存在するのだろうか。


脳ミソをフル稼働して
考えようとしている
私の行為を阻むように

「トーコ〜!、ハサミ〜!」

ママが突然
部屋に入ってくるッ。


「ママッ。

カノンくんもいるんだしッ
ノックして入ってきてよねッ」


私はピンクの封筒を
ママから見えないように
背中に隠した。


「だって。
ハサミがどうとか
トーコが叫んでる、って
セイが…」


「えッ」

「このハサミを
探していたんじゃないの?」


ママが私のハサミを
見せるけどッ。


「デコっていたクマさん達が
みんな取られてるッッ」


「…使ってたら
クマさんの首がもげちゃって

修理しようと思ったら
セイが…」


…デコってたクマさん達を
見事に全部
剥がしちゃったんですねッ。


「…ホント、ごめんね」

ママってば恐縮しきりで
私に何度もアタマを下げる。


「…そろそろ違うのを
デコ盛りし直そうかと
思ってたトコロだったから」


かわいいピンクのレターの
存在が

私を寛容に変えていた。


…だけど

呼びに来たのがセイじゃなくて
本当によかったッ。


いつもなら
セイが届けにくる
パターンなんだけど。


「…もしかしてセイ。

ママを私の元に追いやって
カノンくんを
苛めてる、とかッ」


「何バカなコト言ってるの」

ママは私の危惧を
軽く笑い飛ばすけどッ。


「セイは
弟みたいなカノンくんに

おにいちゃんとして
いろいろ教えてあげたいのよ」


…ママのアタマの中は
いつも平和でいっぱいですッ。


いつもより
おおきなフリルのついた
エプロンを
フワフワさせながら

「もうすぐゴハンだからね」

私の部屋を出て行こうとした
ママを見て

「待って、ママ!」

閃いた。