「遠慮しなくて
いいんだからねッ」

私はカノンくんに
そう言いながら

セイをひと睨みして
威嚇したッ。


「……」

セイは
プイッと横を向き

黙ってフォークで
グサグサと
自分のお皿の上のエビを
串刺しの刑にしてッ

不機嫌さを
私にアピールするッ。


そんなふたりを
我関せずと言わんばかりに

カノンくんは
私の取り分けたてんぷらに
お箸を伸ばして

黙々と食事を続けていて。


…肝が据わっている、とゆ〜か
図々しい、と表現するのが
正しいのかッ。


「カノンくんは
本当に好き嫌いがないのね〜」


「…ええ。そうですね」

ゴハンのときも
お行儀のよいカノンくんッ。


フレンドリーな
ウチのママに対しても

あくまで自分のスタイルを
崩さない。


「育ち盛りですものね♪

ゴハンのオカワリは?
遠慮せずにドンドン食べてね」


「いえ、お気を遣わずに」


「…そお?

じゃあ。
お茶でも淹れましょうね。

カノンくんは
番茶と緑茶
どちらがいいかしら?」


「皆さんと同じで」

「……」

…お気を遣わずに、と
言っておいて

かえって
ヒトに気を遣わせる
そのキャラクター!


「ごちそうさまでした」


静かにお箸を置く姿も

やたらと
背筋が伸びていてッ。


…周りの人間に
どこまでも緊張感を強いる
中学生だッ。