「お前は何をニヤニヤ笑って
見てるんだッ」
…油断をしていたら
セイのムカつきの矛先は
いつの間にか
私の方へと向っていてッ。
「……」
刃物のように鋭く光る
セイの目が
…恐いですッ。
なのにッ!!!!!!
「マユミさんの淹れたお茶
美味しいですね」
なんてッ。
この中学生は
この荒んだ空気の原因が
自分にあるのだと
自覚がないのかッ。
「この間スーパーの
賞味期限・限界セールで
安かったんだけど
思い切って買って
正解だったわ〜♪」
ちょっと余計なひと言が
恥ずかしいママを
「きっと
マユミさんのお茶の淹れ方が
上手なんですね」
なんてッ。
「あらッ♪」
昼ドラさながら
端正な横顔を
見せつけるようにして
人妻のママを
掌の上で転がしてますッ。
「……」
距離を置いたかと思えば
なついてみたりッ。
ネコのように気まぐれで。
…やっぱり
セイと血が繋がっている
だけはあるッ。
「母さんッ!
俺、コーヒーねッ」
子どものように
食べ散らかした自分の皿を
女優のような美しい指で
セイが
カノンくんのお皿の上に
乱暴に重ねてますがッ。
さっき私に向けられ掛けてた
セイの憤懣の矛先が
いつの間にか
カノンくんの方に戻っていて。
…ちょっと、ラッキー♪