本気ッ♂001


リボンの扱いが
イマイチ乱暴だ、と

体育館の端っこで

私は
新体操部のみんなとは
別メニューで

ひとり
リボンと格闘するッ。


「トーコは動きは機敏だし
柔軟性にも長けているのに

動きがイマイチ
オンナらしくないんだよね」


こんがらがって
固結びになってしまった
長い競技用のリボンを
解いていた私の傍に来て

私の親友で
新体操部の部長のナンノが
手厳しいコトを言うッ。


「トーコは動きがどこか
少年っぽいってゆ〜か」

新体操は
技術もそうだけど

やっぱり芸術性が
大事だから、って

ナンノちゃんッ。

そのセリフ
今日、何度めですかッ。


「恋愛をすると
自然と動きがオンナらしく
やわらかくなる、って
コーチが言ってたけど

ハッキリ言って
トーコって
いい恋してないんじゃない?」


…もしもしもしッ!?


「セイくんってさ。
やっぱり年下だから

イマイチ
オトコとして
頼りないのはわかるけど」

ってッ。
ナンノちゃんッ。


セイの
高校生離れした
あの匂い立つ色香や
極上のオーラに

鈍感でいられるアナタは
ある意味凄いと思いますッ。


「まあ、セイくんも
まだまだ
発展途上なんだろうし

せめて将来性に
期待してあげなくちゃ、ね」


「……」

恋愛に関しても

ナンノは何故か
あくまで上から目線でッ。


「戸籍上はまだ弟で
家族として暮らしてるから

世間の目に遠慮して
セイくんも
積極的に出れないのかも
しれないけれど」


…などとッ。

ナンノは言いたい放題
言ってくれていますけどッ。


セイは昨夜も
親の目を盗んで
私のベッドに忍び込んできて

私が気絶するまで
頑張っていました、なんてッ

処女姫ナンノに
そんな話が
できるワケもなく…。


「…オンナらしい動きとか
もっと研究してみるよッ」

私は解いたリボンを
頭上で
ブンブン振り回しながら

その妖しい話題を
打ち消そうとした。

のにッ。


「言ってる先から
リボンの扱いが乱暴ッ!」

ナンノの眉間に
シワが寄るッ。


「ほらッ、トーコのせいで
見学の中学生達に
笑われてるじゃないッ」