ナンノが気にしている見学者。
今週のウチの高校は
オープンキャンパスに
なっていて
来年受験を控えている
体育推薦を考えている中学生
なんかが
たくさん見学に来ていて。
ウチの新体操部も
まずますの
人気の見学コースに
なっていたのだが。
…別に彼女達は
ニコニコ見ているだけで
けっして
笑われてはいないと
思うのだが。
「……」
わざわざ反論して
ナンノの逆鱗に触れるのも
バカらしいから
ここは黙って
自分の見解は飲み込んで。
「あの白いベレー帽の
オンナノコ達は
昨日もおとといも
ウチの部を見学してたよね」
私は話題の転換を
図ったつもりだったのにッ。
「私立のお嬢さま学校よ」
エスカレーター式の高校も
新体操にも
力を入れているから
「間違っても
ウチに入学するコトは
ないと思う」
ヒマを持て余して
冷やかしに
きてるんじゃないの?、って
ナンノはグループの輪に
戻っていった、けど。
「ナンノってばッ」
分かんないじゃないよね。
名門の部活に
ついていけなくて
新体操を
もっと楽しみたいって
学校を探しに来てるのかも
しれないのにねッ。
私はシュパ、クルクル、と
手早くリボンをまとめた。
パチパチパチパチパチッ。
そんな私のリボンさばきに
拍手を送ってくる少女が
ひとりッ。
こんなコト
ちっとも
難しい技じゃないのに
凄い、凄い、と嬉しそうに
手が腫れんばかりに
拍手してて。
「……」
シュパ、クルクルッ!
アンコールに応えるように
同じ技を繰り返してみせると
「きゃあああああん♪」
…もっとウケたッ。
シュルルルッ!
シュパッ!
「きゃああああああん♪」
シュルッ!
クルルンッ!
「いやああああああん♪」
…面白いくらいに
反応する子だッ。
ふくよかで。
あのパンパンのホッペなんて
赤ちゃんのそれみたいで
本当に美味しそうな
初々しい女子中学生。
拍手している指も短くて
どこか愛らしい。
私と目が合うと
遠慮がちにちいさく手を
振ってきたりしてッ。
「……」
そのあまりのキュートさに
気がつくと
私も
手を振り返していたりして。
「ぎゃゃあああああ
あああああああああああん♪」
本日、МAXに歓喜する声が
体育館に響き渡ったッ。