「…久々に会った人間に
対しての第一声が

それですか?」


相変わらずですね、って

どこまでも
ヒトを小バカにした

そのでっかい黒い瞳ッ。


「……」


セイと正真正銘
血の繋がっている
年下のイトコでッ。

セイがこの秋に
中退してしまった名門校の
中等部の後輩でッ。

こましゃっくれた
中学生ッ!!!


しかもッ!!!!!

私とセイが
カノンくんの家のお風呂場で

あんなコト。
こんなコトッ。

あっちでにゃんにゃん
こっちでにゃんにゃん
してたのを

み〜んな知ってる
目撃者ッッッ!!!!


「そこ、どいてくれますか?」

動揺して固まる私の肩を
カノンくんが
払いどけようとして


ドガッ!

私の背中の壁が揺れたッ。


「俺のオンナに触るなッ!」


「……」

セイの長い足が
私へのカノンくんの接近を
阻むッ。


「…わかってますよ。
安心してください」

僕には
セイ先輩みたいな
マニアックな嗜好は
ありませんから、ってッ!


「…どういう意味だッ」

セイがカノンくんの挑発に
乗っていてッ。


「セイ、ちょっとッ」

落ち着こうよ、って
なだめながら

セイを私の部屋に
押し込めようとすると


「俺のトーコの
どこがマニアックなんだッ!」


セイは私のカラダを
反転させたッ。


「この謙虚な
なつっこい小粒な目!

無造作な平和な眉も
緊張感がない口元もッ

これ以上ないってくらい

誰からも愛される
要素だぞッ!!!」


「……」

「……」


…セイッ。

嬉しいハズの褒めコトバも

女性として
褒められているようには
思えないのは

気のせいでしょうかッ。


「ふッ」

「何がおかしいッ!」


「セイ先輩って、ホント
トーコさんのコトになると

その辺のバカなオトコに
成り下がってしまってて

残念です」


「!!」


「孤高で
誰も寄せつけなかった

どこまでもクールで
残酷なほどに美しい
僕の先輩は

どこにいってしまったのか」