…とにかくッ!

セイからの返信を
待っているよりも

現場に行った方が
早そうだッ。


「私、あの電車に乗るからッ」

ぼやけた視界の遠く
見えてきた電車を指さして

私あふくふく少女に
別れを告げたッ。

けど。


「あれ?」


気のせいだろうか。


今、まさに
到着しようとしていた
その電車の中の

見知らぬ乗客に

指をさされているような…。


到着した電車のドアが
開いた途端

例のバラ撒かれていた
私のコピー紙を

私の方に向けながら

乗客のひとりが
飛び出してきてッ。


黒いシヨールを
アタマから被り

ペイズリー柄の地味な
ロングスカートの裾を
捲り上げながら

こっちに向かってくるのは

ヒトのよさそうな
上品そうな白髪の
おばあさんッ。


「あッ、アナタ
逃げないでッ」

と、言われましてもッ。


そんな凄い勢いで
見知らぬヒトに
向かってこられたらッ!!!


「そのコピーに関しては
私は無実ですからッッ」


気がつくと

私のカラダは
本能的に自販機の裏に
逃げ込んでいてッ。


ちいさな駅。

ただでさえ
電車の停車時間も短いと
ゆ〜のにッッ。


「ああッ。
電車が発車しちゃうッ」


こんな追いかけっこを
している場合ではない、と
わかってはいるけれどッ。