横殴りの雨を
背中で受けながら
素足に垂れてくる
冷たい滴に
靴下もぐっちゃりで。
「ぶるるッ」
何だかカラダの芯から
底冷えもしてきたしッ。
…次の電車が来たら
さりげなく
ひとりで乗っちゃおっかなッ。
そんな
私の現場放棄のニオイに
気づいたのか
「ず、ずずず…ッ」
寒さから
鼻水を指ですする私に
「…汚い」
少女が
ひと言吐き捨てるッ。
…てっきり自分の世界に
入り込んでしまっていて
私なんて眼中にないと
思っていたのに。
「…どうぞ」
なんて
ピンクのサクラパンダの
可愛いティッシュを
少女が私に差し出してきたッ。
…さすが
ナンノが言ってた通りの
お嬢さま学校。
持ち物にもスキがないッ。
「…ども」
私は恐る恐る
その可愛すぎるティッシュを
一枚、引き出して。
遠慮気味に
私が鼻周りを拭うのを
少女が
怪訝そうな目で見ている。
…この子が私のコトを
どう評価しようが
確かに自由ではあるけれど。
まともに
話したコトもないのに
こうやって
一方的に嫌われるのって
やっぱり
どこか理不尽で。
こうして
私が地球上で息をして
存在しているコトすら
全否定されているような
気さえしてしまうのは
何故なのかッ。
「……」
ちょん、ちょん、ちょん。
哀しい気持ちを
拭うかのように
貰ったティッシュを
ちいさく折り畳みながら
何度も繰り返し使っていると
「…1枚と言わず
どうぞッ」
少女が私の胸元に
乱暴にティッシュを
押しつけてきたッ。