本気ッ♂020
「えっと、あ…」
ふくふくホッペの少女の
姿を見つけて
反射的に
電車を飛び降りたモノの
その先のコトを
考えての行動では
なかったから
「あの…」
声を掛けようにも
少女の名前すら
わからないッ。
「……」
少女も
私の顔をみつめたまま
じっと押し黙っていた。
私が傍に近寄っていっても
堂々としたモノで
顔色ひとつ変えずにいて。
…やわらかそうな
イメージがあったけど
案外、気は強いのか。
「あはッ」
この緊張感に
私の方が根負けして
愛想笑いしてしまう
自分が哀しいッ。
そんな私の態度に
苛立ったのか
「…何ですか?」
少女の方から
私に口を利いてきた。
だけどッ。
「あのッ、あのねッ」
少女が向けてくる
真っ直ぐな瞳から
何故だかこっちが
目を逸らしてしまっててッ。
「…ごっくんッ」
…これじゃまるで
私の方が加害者みたいだ。
「こ、こんなトコロにいたら
風邪をひいちゃうよッ」
なんて
私の言語の方が
この場の空気の冷たさに
うち震えているのが
情けないッ。
「偽善者」
「えッ」
「高校生にもなって
偽善者の意味も
知らないんですか?」
「……」
少女が
挑発的なコトバを吐いて
そっぽを向くッ。