「……」

…この美味しそうな
可愛いホッペに

似合わない
クールなコトバばかりが
飛び出してくるけれど。


雨の音のせいか

その声は
頼りないくらい
ちいさくて…。


ときどき
真っ赤な鼻をすすっている
その仕草を見ていると

どんな生意気な口を
利いていても

やっぱり
まだ中学生なんだな、って
思ってしまった。


「……」
「……」

新体操部に
見学に来ていたときの

友達と手を取り合って
私に声援を送っていた
あの無邪気で愛らしい様子も

見る影もなく。


「…今日はお友達は
いっしょじゃないの?」

「見ればわかると
思いますけど?」


要らぬお節介な心配に

「…あは。…そ〜だね」

会話が全然成り立たないッ。


「……」
「……」


あのときは
あんなに盛り上がって
見学してくれていたのにな。


「……」

クルクル、と

あのときの
リボン演技の手首の返しを
再現して

「はああああ」

曇り空に向かって
私がちいさく
溜息を飛ばすと


「友達が…」

「えッ!?」

「…友達が新体操に
興味があっただけで…」

「……」


…やっと
口を利いてくれたかと
思ったら

つきあいで
盛り上がっていただけだ、って

言いたかったのか…。


はああああ。


「…お手紙貰って
嬉しかったんだけど、な」

私の愚痴に

「ウソばっかり!」

少女が勢いよく反応してッ

「カノンくんに
嫌がらせされた、って
相談したクセにッ!」


少女が
早口で捲し立ててきたッ。