「…相談なんてしてないよ」

少女の剣幕にたじろぐ私に


「だったらどうして
あの手紙をカノンくんが
持っていたんですか!?」


少女の勢いは
ますますエスカレートしてッ。


「それは…ッ」

…脱衣カゴから
カノンくんが見つけて
持ち出したなんて

何をどこからどう
説明すればいいのやらッ。


ううん。

それよりも!


あのお手紙が
嫌がらせだったコトを

彼女自身が、すんなり
認めてしまっているコトに

「……」

切ないやら
情けないやら
何やら、で

コトバに出来ない思いが
私の胸をいっぱいにする。


なのに

釈明をしようとしない
私の態度を

「…もう私ッ
誰も信じられませんッ」

なんて
さらに責められて

泣きたいのは
こっちのハズだったのに。


私を見つめる少女の目に

みるみる
ナミダが溢れてきたかと
思ったら

「……」

ぐしぐしぐしッ。


ナミダを誤魔化すように

少女が白い制服の袖口で
雨に濡れた自分の顔を
乱暴に拭った。


「……」

白い制服の袖口から
わずかに覗く
白いペンキの跡。


よく見ると
制服のあちらこちらに
ちいさなシミができていて

そこだけ
雨水を吸わずに
真っ白く乾燥している。


「…新体操部の部室に
落書きしたのも…」

「!!!」

少女は私の指摘に

初めて自分の手首が
まだ汚れていたコトに
気づいたらしく

慌てて自分の手首を隠し

ゴシゴシ、と
必死で汚れを
擦り落とそうとした。


「…ペンキなんて
最初から用意してきたの?」

「……」