本気ッ♂019
「はああああ」
セイが溜息をつきながら
どでん!、と
電車の長椅子の
ど真ん中を陣取った。
足を投げ出し
背もたれの部分が
首の位置にくるまで
シートに沈み込んでいてッ
なんて行儀が悪いんだかッ!
「…もおッ」
セイの傍に駆け寄って
そのだらしなく
広げられた長い脚の
両のヒザを揃えさせ
私はセイの隣りに座った。
こんな風に
機嫌が悪いときのセイに
何かを問い質すのには
本当に気力がいるけれどッ
「…カノンくんが
問題を起こした、って
どういうコト?」
ここは
ビビっている場合ではないッ。
「……」
「ちゃんと質問に
答えなさいよねッッ」
「痛い痛いッ」
私に耳を引っ張られ
セイが堪らず声をあげた。
「…強制わいせつの疑い
だってさ」
「は?」
…今、凄いコトを
サラリと
おっしゃいましたけど?
「だあ、かあ、らあ…!」
セイは繰り返すのも
かったるいと
言わんばかりだけどッ。
それって
もしかして
もしかして
もしかしてッッ!!!!
「…ごっくんッこッ」
このとき
極度の緊張の余り
息を吸い過ぎたのが
悪かったのかッ。
「カノンくんが
痴漢されたって意味ッ!?」