私が発してしまった

聴き捨てならない
スキャンダラスな響きが

車両中を震撼させるッ。


「……」

しいいい〜〜〜〜ん…。


…気持ち悪いくらいに
車内が静まり返りッ。


私の元に

乗客の好奇の視線が
容赦なく突き刺さったッ。


「…え〜〜〜。こほんッ!」

嫌な空気を
咳払いでリセットさせて


「…痴漢に遭ったってッ
私達と別れた直後にッ?」

乗客の視線を避けるように
セイに肩を寄せて

できるだけ冷静に
小声でそっと耳打ちし

詳細を望むと。


「…わいせつな行為をして
突き出されたのは

カノンの方」


なんてッ。

セイの性格と自分の耳を
同時に疑いたくなる返事が
簡単に返ってきてッ!!!!


「あはッ。カノンくん、が?」
「そう」

「痴漢を?」
「うん」

「された?」

「…何なら窓ガラスに
平仮名で書いてやろうか?」


ぷるぷるぷるッ!!!!!!

私は勢いよく
首を左右に振って

セイの親切を
丁重に拒絶するッ!!!


「……」

カノンくんがッ。
カノンくんがッ。

まさかッ
あのカノンくんがッッッ!!


「……」

私の下着を手にしていた
カノンくんの映像が

再び私のアタマの中に
再生されッ。


何が真実で何がウソなのかッ。

自分の中で
解決し整理されていたコトが
イッキに崩壊していくのが

自分でわかった。


「あ、あ、あッ」