「突然、ホームで
肉まんオンナに手を掴まれて

”このヒト痴漢です”なんて
大声をあげられたらしいけど」


そこまで語ると

セイが私のヒザの上で
静かに目を閉じた。


「…何だッ。そんなコトッ」

最初に
強制わいせつなんて
聴いたから

驚いたけど。


「そんなの
ちょっとした仕返しみたいな
イタズラじゃない」


カノンくんは
保護される寸前まで
私達と一緒にいたんだし。


「切符に印字されてる
駅名と時刻だって
証拠になるでしょ?」

私はセイの学ランの
胸ポケットを探りながら

ホッと胸を撫で下ろした。

のにッ。


「…学校を休んでおいて
制服姿で公衆の面前
痴漢呼ばわりされるなんて

学校の品位に
傷をつける行為だ、と

充分に停学処分に値すると
思うけどね」


「……」

それが
いつもの私をからかう為の
大袈裟な表現だったのか。

それとも本音なのか。


セイが
目を閉じたままでいるのが

怖いッ。


「…カノンには

母さんの
お節介なまでの親切心に
感謝して貰いたいよ」


「え?」