本気ッ♂018
こんなとき
映画に出てくるヒーローなら
「俺の彼女に何か?」って
カッコよく登場して
助けてくれるハズなのにッ。
「セイッ…!?」
駅員さんに
引きずられるようにして
連行されながら
私はセイの姿を探し
懸命に振り向いた。
「セイッ!!!!」
私の声が
聞こえているんだろうに
セイはケータイ片手に
誰かと話し込んでいてッ。
こんな絶体絶命な状況下で
私よりも優先される
電話の相手って
いったい誰なんですかッ!?
「セイッ!」
「セイッ」
「セイってばッ!!!」
自分の名前を連呼され
やっとチラリ、と
セイが私の方を見たかと
思った、らッ!!!
ウルサイと
言わんばかりに
片耳を薬指で塞ぎながら
私の方に背中を向け
他人のフリを
決め込むとはッッ!!!
どうしてッ!?
何でッ!?
何故なんだああああ!!!
アタマの中が
極太文字の疑問符で
いっぱいになるッ。
「…キミ。
まさか
あの目立つ白い学ランの
少年と知り合いなの?」
セイの名前を連呼する
私の視線の先を辿りながら
駅員さんが
私に話し掛けてきてッ。
…”まさか”って
どういう意味なんでしょうか。
駅員さんの言い回しに
引っ掛かりながらも
「知り合いとかじゃなくて…」
説明し出したのは
いいけれどッ。
この場合ッ。
「弟です」と答えた方が
賢いのか。
それとも
「彼氏です」と言った方が
自然なのかッ。
その迷いが
私を一瞬、沈黙させるッ。
「だろうね。
あの制服は日本屈指の
超名門校だもんな」