本気ッ♂017
「…私の…写真?」
「……」
セイが私をその場に越して
車両の先頭の窓に
貼りついていた”ソレ”に
ツカツカと近づいていく。
…雨風に飛ばされてきた
ノートサイズの
カラーコピー。
荒い画像ながらも
それが私の写真であるコトは
近づかなくても
すぐにわかった。
どうしてこんなモノが
私の乗っている車両の窓に
貼りついたのか。
きっと何かの偶然だ。
そう思いたかったけれど。
また1枚。
そして1枚、と
次々に車両の横を
雨風に乗って飛んでいく
コピー用紙。
それが
おそらく大量に
どこかでバラ撒かれて
いたであろうコトを
否定する材料が
私にはなく…。
「…セイ。これって」
「……」
車両の先頭の窓から
外の様子を覗き込んでいた
セイが
ゆっくりと顔をあげる。
さっきから
こちらの様子を
チラ見していた乗客達を
キツイ眼差しで
威嚇しながら
ツカツカと
皮靴のカカトを鳴らし
セイが私の元へと
戻ってきた。
駅到着を知らせる
車内放送が流れて
「ほら、降りるぞ」
セイが私の背中を
ドアの方に押し出すと
いいタイミングで
電車のドアが開く。
駅のホームでは
駅員さんが竹棒で
あちこちに
貼りついていた
私のカラーコピーを
素早い動きで
懸命に
剥がし集めていて。
こんなたかが紙切れだけど
天候が天候だけに
もし電車の運行に
支障でもあったら
大変なコトになるんだろう。
駅員さんって
ひと駅に
こんなにいたんだ、って
その数の多さに
事の重大さを
思い知らされた。
なのにッ!!!