何て読むんだろうッ。

「……」

弓道場に掲げてあった
少女が書いたと言う書も

達筆すぎて読めなかった。


「“性相近し習い相通し”」

生まれ持った才能なんて
みんな変わりはない。

どれだけ
夢に向かって頑張れるか、が
人間の才能の差をつくる。

孔子のコトバだ、と
セイは語った。


「弓道場にも
このコトバがデカデカと

これみよがしに
掲げてあっただろ?」


あッ!!!

これってッ

「カノンくんが
地下で弓を引いたときに
口にしていた…!!」


「お前
どうでもいいコトは
よく覚えているのな」

セイが笑いながら

私のオデコの上
くるくると
筆で花マルを描く。


「……」

でも、そうだとしたら

カノンくんは
自分のコトを
嫌ってはいないんだ

まだ少しは
脈はあるのかも、って

少女が
思い込んでしまったとしても

仕方がないワケで…。


「…やっぱりコレ

本当はカノンくんに
渡したかったんじゃ
ないのかな」


「私とカノンくんは
繋がっているんですッ!

ってか?」

セイが
少女のクチマネをして

ニヤリ、と笑った。


「またそうやって
ヒトの恋心を弄んでッ!」


「…この筆。

あの肉まんオンナの
大事なお守りなんだってさ」


「え」

この筆を手にして以来

書の世界で賞をいっぱい
貰えるようになったから


「あのヒト
アタマも要領も悪そうだし

こういうの
持っていた方が
いいと思います、って

俺にこの筆を
託していったんだけど?」


「……」

「素直に感謝の気持ちを
伝えられない
チュー坊の気持ちを

酌んでやれば?」