【198】

お菓子を握らされていた。


懐かしいヒトに
街で声を掛けられた。

「おばさんのコト
覚えてるかしら?」

そう言って
自分を指さす老婦人。

最初は誰だか
わからなかったけど。

「ほらッ。
トーコちゃん家に集金しに
いつも行ってた…」

「牛乳配達の
おばさんッ!!!?」

懐かしいッッッ。


「もう牛乳店を廃業して
13年にもなるけれど
覚えてくれてたなんて
嬉しいわ」

「当然ですよッ!」

だって
おばさんは集金の度に
いつも私にお菓子を
用意してくれていて。

「おばさんが廃業しちゃって
集金に来なくなったときは
子どもゴコロにすっごく
ショックでしたからッ」

興奮を隠せない私に

「昔のトーコちゃんは
私の顔を見たら
まず掌を出してきたけれど」

もうあのときみたいに
お菓子をねだっては
きてくれないのね、って

おばさんってば
私をまだ子どもだと
思っているのか。


「私だけじゃなくッ
ちいさい子はみんな
おばさんのお菓子
楽しみにしてたと思いますッ」

”ちいさい子”と”みんな”
とゆ〜フレーズを
私が思い切り強調すると

「あら。当時
私がお菓子をあげていたのは
トーコちゃんだけよ」

「え」

意外な答えが帰ってきたッ。


「赤ん坊だったトーコちゃんの
覚えたての”バイバイ”が
あんまり愛らしかったから」

”バイバイ”ばかりさせてたら

「集金に来た私の顔を見るなり
”バイバイ”って
されるようになっちゃってね」

おばさんが
懐かしそうに私の掌に
キャンディーを握らせる。

「ほら、こうすれば
”バイバイ”
出来なくなるでしょう?」

苦肉の策だった、って
おばさんが苦笑してッッ。


掌の懐かしい
13年ぶりの感触とともに

いつもお菓子を
握らされていた真相を

知るッ。





とことんトーコッ☆【198】

≪〜完〜≫



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