【175】
雨に濡れるママ。
雨の中、同じ時間を
走った場合と歩いた場合
濡れ方には差がないらしい。
「家に電話したけれど
誰も出なかったから」
突然のゲリラ雷雨の中
傘も持たずに
のんびりと濡れて
歩いて帰ってきた私に
仮眠からの起き立てオーラを
放ちながら
セイが
冷たい眼差しを向けてきたッ。
「…確かに
同じ時間内での濡れる量は
変わらないかもしれないが」
走った方が遥かに
雨にさらされている時間が
少なく済むだろうが!、と
呆れたバカだ、と
言わんばかりに
不機嫌なセイが玄関先で
水を含んで重くなっていた
私の制服を
無理やり脱がしてくッ。
「走った方がよかったんだ…」
…偶然見たテレビ番組の
変な入れ知恵のおかげで
「何だか
物理のひっかけ問題で
ハメられた気分ッ」
重い気持ちのまま
靴を脱いでいたら
「あら、トーコも
今、帰ってきたの?」
玄関ドアが開く音と同時に
背後に明るいママの声!
振り向くと
カサを持った
びしょ濡れのママが
外から帰ってきていてッ。
「ママッ!?」
どうしてアナタは
カサを持っているのに
そんなに濡れて
いるのでしょうかッ。
「今日の雨粒って
いつもより
おおきかったから
雪に変わる瞬間が
見れるんじゃないか、って
ずっと空を見てたんだけど」
雪に変わる前に
家に着いちゃって
ガッカリだわ、ってッ。
「……」
「……」
さすがのセイも
苦笑するしかないなんてッ。
ママのロマンは
今日も世間の価値観を
凌駕するッ。
とことんトーコッ☆【175】
≪〜完〜≫
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