【160】

偶然の産物、大根餅。

テレビの料理番組で
紹介されていた大根餅を
見よう見まねで作ってみる。


「大根をすりおろして」

ネギに干しエビッ。

「ええいッ。
納豆も入れちゃえッ」

いつになく
大胆に料理を進める私に

「大丈夫かよ…」

セイが心配して
料理の様子を覗きに来たッ。


「料理なんてセンスなんだから
レシピ通りでなくても
いいんだからッ」

私は味つけの塩を手に取って
感性の赴くまま調味するッ。


「細胞壁が壊れた大根に
塩を入れたら
溶媒分子が移動して
水分が出るだろう!」

浸透圧の現象は
この間、テストに出たのに
もう忘れたのか、ってッ

そんなの覚えられていたら
試験でもっといい成績を
残してますッ。


「水気はちゃんと切って
上新粉も増やすからッ」

「大根の成分のジアスターゼは
でんぷん分解酵素が
多く含まれてるから
上新粉は糖に変わって
甘くなるぞ!」

…私の横でウルサイ
ウルサイ、ウルサイですッ。


「セイの講釈を聴いていると
料理じゃなく
理科の実験をしている
気分になるッ」

「実験と言うのは
すでに構築されている仮説や
既存の理論が
本当に当てはまるかどうかを
確認する作業を呼ぶんだが」

…理屈っぽいオトコは
どこまでも、うっとおしいッ。


それでも

じゅじゅじゅじゅじゅううう。

フライパンが
美味しい音を立て始め
いい匂いが
鼻をくすぐり出すと

「…偶然の産物から
新たな発見があるのも
科学だからな」

おかわりはないのか?、なんて
セイってば
平然と掌を返してきてッ。


「同じのは
二度と作れないからッ」

一期一会の私の料理ッ。

出逢えた偶然に感謝して

「ありがたく食べなさいッ」





とことんトーコッ☆【160】

≪〜完〜≫



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