【079】
勝たせないワケ。
セイがパパと
チェスをやっている。
パパは一手、一手
慎重に長考しながら
駒を動かしているのに
セイはパパが駒を置くと
間髪入れず
自分の駒を動かしていた。
「早打ちしてる割には
なかなか勝負が
つかなかったよね〜♪」
パパに惜敗して
コーヒーを淹れに
キッチンに入ってきたセイを
ここぞとばかり
からかってやるッ。
「父さんはさ。
チェスをやらせても
いいヒトすぎるから…」
勝つ為に
何手も先読みして
陥れる為の
ワナを張ったりするのって
「何だか自分が悪い人間だ、と
思い知らされてるようでさ」
だから
手を抜いて勝負したんだ、と
言いたげなセイ
だけどッッ!!!
「私とオセロするときは
これ以上ないくらい
コテンパにするクセにッ!」
合点がいかない、と
訴える私に
「……」
セイが真新しいミルで
コーヒー豆をガリガリと
挽きながら
溜息混じりに
笑ってたりしてッッ!!!
「そもそも
勝てるワケもないのに
俺に勝負を挑んでくるコト自体
図々しい、と
感じてもいないヤツだからな」
うぬぬぬぬうううううう。
それは
どういう意味ですかッ!
ガ〜リガリガリッ。
ゴリッゴリガリッ!!
コーヒー豆を砕くミルの音が
私の気持ちを代弁しているッ。
「…俺に
本気で向かってくるトーコは
本当にかわいくて」
ついつい困らせて
みたくなるんだよな、って
セイが
パパの目を盗みながら
私の唇にちいさくキスをして。
「……」
挽き終わったミルの中から
コーヒー豆の
とびっきりのいい香りが
私の五感をくずぐった。
とことんトーコッ☆【079】
≪〜完〜≫
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