【094】
発芽のプレゼント。
パパのオーストラリアの友人から
”グリーンボール”の
栽培セットが送られてきた。
「オーストラリアの
別名、ブラックビーンズ?」
説明書の手順通り
茶色の皮を剥ぐと
中から
蒙古斑つきの
赤ちゃんのお尻のような実が
姿を現してッ。
「日光にあたると
濃い緑色に
変わっていくらしい」
セイが説明書を読み進める。
お茶碗サイズの
ちいさなテラコッタ鉢。
土の上に横たわるように
でで〜ん、と
でっかい緑のお豆さんッ。
「何だかとっても可愛いねッ」
ひと目で
気に入ってしまったッ。
「発芽すると
真ん中から、かぱっと
半分に割れて
そこから芽を出すんだってさ」
ジャックと豆の木の
童話みたいで
「パパッ!
これ、私が貰って
育ててもいい?」
おねだりせずには
いられなかった。
「発芽まで2〜3週間って
トコらしいけど」
船便で送ってきてたから
「劣悪な状態に長期間
置かれてたかもしれないな」
上手く育たず
がっかりするだけだぞ、なんて
セイも
意地悪を言うのを忘れないッ。
「ちゃんと愛情いっぱいに
育ててみせるからッ」
そう宣言して
私はそれを
自分の部屋の
日当たりのいい窓辺に
置くコトにした。
勉強や部活で
ヘロヘロになって帰ってきて
水をやるのを忘れた日も
あったのに。
「見てッ!
芽が出たよッッ!!!」
嬉しくて仕方ないッ。
「親がバカでも子は育つ」
セイってばッ
ヒトの歓喜に
水を差すヤツだッ。
「セイに感謝しなくちゃ、ね」
「え?」
「トーコがいないときに
太陽の動きに合わせて
鉢を動かしたり
栄養剤を与えたり。
トーコの水のやりすぎも
黙ってフォローして」
とっても細やかに
世話を焼いていたんだから、と
ママがそっと
私に耳打ちしてきて。
「…セイが?」
「……」
セイは聴こえてないフリをして
新聞を読んでいるけれど。
「この芽がおおきく育つのが
すっごく楽しみッ♪」
”発芽の感激”という
セイのプレゼント。
今日は素直に受け取るね。
とことんトーコッ☆【094】
≪〜完〜≫
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