【283】
桃缶は持たないぞ。
セイとショッピング街で
買い物をしていたら
大好きな白桃の缶詰が
大安売りッ!!!
「黄桃じゃなくて白桃が
百円なんだからッ!」
ママに電話したら
買ってよし、の
ゴーサインッ。
なのに
「言っておくが
そんなモノ俺は絶対に
持ち歩かないからな」
大量の桃缶を前に
セイの眉間に
シワが寄ったッ。
セイも当然、持ってくれると
疑わなかったから
たくさん買ったのに。
「ママが買ってきてって
ママが
お願いしてたんだけどな〜」
ママ、というコトバを
強調してみるけれど。
「母さんには
電話の途中で売り切れた、と
報告すればいい。
その缶詰を持ち帰る労力を
金に換算したら
確実に大赤字だ」
「お金にならない労働力を
有効に使うんだから
いいじゃないッ」
「お前の場合は、だろ」
むむむむむううううう。
「いいもんねッ!
そのかわりセイには
絶対食べさせて
あげないんだから!」
ヒトが困っていても
絶対に自分の主張を
曲げようとしないのは
セイの悪いトコロだと
私は思うッ。
わさわさと音を立てながら
両手、両肩に
白桃の缶詰の入った
ビニール袋を携えて
セイの後ろを歩いていると
「ほらッ!
たらたら
歩いてるんじゃない」
階段前で
セイが睨みを利かせ
私を待っていたッ。
「私なんか待ってずに
先に帰ってればッ!」
怒りながら追いつく私に
「ほら」
セイが
手を差し伸べてくる。
「…もしかして、桃缶
半分持ってくれる
とか!?」
思わず
期待してしまったのに。
「まさか!」
セイはひょい、と
桃缶ごと私を
自分の肩に担ぎ上げ
階段を登り始める。
「いいか。
俺は特売の桃缶なんぞ
死んでも
持ったりしないからなッ」
どれだけ
意地っ張りなんだかなッ。
「……」
セイの肩の上で
わさわさとビニール袋が
やさしい音を立てていた。
とことんトーコッ☆【283】
≪〜完〜≫
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